第5編 高分子化合物

第3章 合成高分子化合物

1合成繊維 2合成樹脂

3高分子化合物と人間生活

 4天然ゴムと合成ゴム

 合成繊維

合成繊維

綿,麻などのセルロースを主成分とする植物繊維や毛,絹などのタンパク質を主成分とする動物繊維は天然繊維とよばれる。一方,石油から得られる低分子化合物(単量体)を重合させ,高分子にして,紡糸することで繊維構造を形成させたものを合成繊維いう。合成繊維はレーヨン,アセテートなどの再生繊維,半合成繊維とともに化学繊維とよばれる。

 

【縮合重合による合成繊維】

ナイロン(ポリアミド系繊維)

アジピン酸〔 HOOC-(CH2)4-COOH 〕とヘキサメチレンジアミン〔 H2N-(CH2)6-NH2 〕との間で縮合重合すると〔 ナイロン6,6 〕が生成する。ナイロンには多数のアミド結合〔 -CO-NH- 〕ができるので,ポリアミドとよばれる。ポリアミドを繊維状にしたものがポリアミド系繊維である。

 
 

炭素原子6個からなる環状アミドである〔 カプロラクタム 〕に少量の水を加え加熱すると,アミド結合-CO-NH-が切れ開環し,これが多数重合することによって〔 ナイロン6 〕が生成する。この重合を〔 開環重合 〕という。

 

ポリエステル系繊維

ポリエチレンテレフタラートは,エチレングリコールの-OHとテレフタル酸の-COOHの間で脱水すると,縮合重合が起こり生成する。重合体には多数のエステル結合-COO-ができるので,ポリエステルとよばれる。乾きやすく,しわになりにくい合成繊維である。

 
 


【付加重合による合成繊維】

オレフィン系繊維,アクリル系繊維

エチレンやプロピレンなどのアルケンを単量体として付加重合させて生成したポリエチレンやポリプロピレンなどの重合体を繊維状にしたものをオレフィン系繊維という。これらは,軽くて強く,ひもやロープに使われる。

アクリロニトリル〔 CH2CH2CN 〕の付加重合によって生成するポリアクリロニトリルを主成分とする合成繊維をアクリル繊維という。また,アクリロニトリルを主とし,塩化ビニルなどのビニル基CH2=CH-を持った化合物を混ぜて,付加重合させた繊維を総称して,アクリル系繊維という。肌触りが羊毛に似た合成繊維である。このように2種類以上の単量体を混ぜて付加重合を行うことを共重合という。

 
 

ビニロン

酢酸ビニル〔 CH2CHOCOCH3 〕を付加重合しポリ酢酸ビニルとする。さらに加水分解してポリビニルアルコールとし,これにホルムアルデヒド〔 HCHO 〕を作用させると,一部の-OH 2とホルムアルデヒドが縮合して,-O-CH2-O-となる(アセタール化という)。ビニロンには-OHが残っているため,適当な吸水性があり,木綿に似た感触で軽く,耐摩耗性に優れている。

 
 

例題 次の文中の(  )に適当な語句,物質名を記し,問に答えよ。

 多数の(ア)結合-CO-NH-によって連なった合成高分子を(イ)という。(イ)には,アジピン酸と(ウ)との(エ)重合で合成されるナイロン66がある。ナイロン6も(イ)に分類されるが単量体は(オ)であり,(カ)重合で合成される。

問 p-フェニレンジアミンH2N-C6H4-NH2とテレフタル酸ジクロリドClCO-C6H4-COClから合成される繊維の構造を示せ。

 

() アミド  () ポリアミド  () ヘキサメチレンジアミン  () 縮合  () カプロラクタム  () 開環

問 [NHC6H4NHCOC6H4CO]n

 
 

例題 次の文中の(  )に適当な語句,物質名,数字を記せ。

 多数の(ア)結合-CO-O-によって連なった合成高分子を(イ)という。(イ)の代表的な例がポリエチレンテレフタラート(PET)であり,(ウ)と(エ)の2種類の単量体の(オ)重合で合成される。

 図のような構造をもつPETの平均分子量が3.84×104のとき,重合度nは(カ)であり,(ア)結合は(キ)個含まれる。H1.0C12O16   
 

() エステル  () ポリエステル  ()() エチレングリコール,テレフタル酸  () 縮合

() 2.00×102  () 4.00×102

 

例題 次の反応の図はビニロンの製造過程を示している。下の各問いに答えよ。H1.0C12O16Na23

 
 

(1) ポリビニルアルコールが水溶性である理由を25字以内で記せ。

(2) ポリ酢酸ビニルを水酸化ナトリウムで完全に加水分解してポリビニルアルコール100gを得た。このとき消費された水酸化ナトリウムの質量〔g〕を求めよ。

(3) ポリビニルアルコール100gに対してアセタール化したところ,生成物であるビニロンの質量は4.00g増加した。もとのポリビニルアルコールのヒドロキシ基のうち,アセタール化されたものの割合〔%〕を求めよ。

 

(1) 分子内に親水基のヒドロキシ基を多く持っているため。 

(2) ポリビニルアルコール1mol(=44n g)生成するのにNaOH n mol(=40n g)が消費するので,ポリビニルアルコール100gでは,40n×(100/44n)90.991g〕 

(3) アセタール化では,ビニルアルコールの−OH 2mol(=17×234g)が−OCH2O1mol46g)になるので,−OH1mol当たり質量は6.0g増加する。この場合,質量が4.00g増加しているので,アセタール化した−OHは,(4.00/6.0)molである。ポリビニルアルコール1mol中に−OHn molある。ポリビニルアルコール100g(100/44n)molなので,この中の−OH(100/44)molである。このうち,(4.00/6.0)molがアセタール化しているので,(4.00/6.0)/(100/44)×10029.329〔%〕